ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツの創設者であるヴォ・チョン・ギアは、東京大学で建築を学び、JIA(日本建築家協会）の会員でもある親日派の建築家だ。2006年に帰国して事務所を開設。彼が得意とするのは自国ヴェトナムのヴァナキュラリティを色濃く反映させた建築群だ。ギアは、現代的な方法論と美学に基づいて、安価な地元の材料や伝統的な技術をインテグレートさせてサステイナブルな建築デザインを開発してきた。
近作の「ファーミング・キンダーガーテン」をはじめ、「ウィンド ＆ウォーター・バー」「ダイライ・リゾート・会議ホール」「ダイライ・リゾート・バンブー・ウィング」「ウィンド＆ウォーター・カフェ」「ダイアモンド・アイランド・コミュニティ・ホール」など、竹や茅など自然素材を縦横に駆使した作品は、ローカル色豊かで気候・風土と建築との相性は抜群だ。
2010年の上海博覧会では国を代表して「ヴェトナム・パビリオン」を設計し数々の受賞。また2013年にはヴェトナム建築家大賞2012を受賞し、名実ともにヴェトナム建築界のスーパースター的存在だ。生み出す作品はことごとく世界の建築賞を受賞するという、微に入り細をうがったつくりは評価が高い。事務所には日本人建築家が多いのも特徴だ。ハノイ事務所を統括するパートナーの丹羽隆志。ホーチミン事務所ではギアの下で事務所を統括する岩元真明。その他にも日本人建築家はかなりおり、総勢50名もいる事務所は優秀作品を生み出すヴェトナム切ってのアトリエ派事務所。アジアのローカリティを前面に出して世界へ羽ばたく彼らの今後に期待したい。
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文：淵上 正幸（建築ジャーナリスト）