アーバン・スケープにインテグレートした建築を創出

世界の建築事務所vol.05

2015年のヨーロッパ建築賞すなわちミース・ファン・デル・ローエ賞は、バロッツィ/ ヴェイガ・スタジオ設計の「シュチェチン新フィルハーモニック・ホール」に決まった。ヨーロッパ全域を対象にしたヨーロッパ最大の建築賞を射止めるのは、新進の若手建築家にとっては至難の業だ。今年はデンマークのビヤルケ・インゲルス(BIG)やアイルランドのオドネル+トゥミなどの強豪がおり、それらを制したのは相当な実力の持ち主だし彼らの未来は明るい。 ファブリツィオ・バロッツィは1976年イタリア、ロヴェレート生まれの今年39歳。アルベルト・ヴェイガは1973年スペイン、サンチャゴ・デ・コンポステラ生まれの42歳。ふたりは2004年に事務所を設立。その後共にバルセロナのカタロニア国際大学デザイン学科の准教授をし、バロッツィはジローナ大学デザイン学科の准教授になり、ヴェイガはカタロニア大学デザイン学科の教授になっている。
彼らは30歳そこそこの頃からヨーロッパの建築コンペに参加し、公共建築コンペに次々と勝利する。まさにヨーロッパの建築家はコンペで生きていけるというアフォリズムを実践している感じがする。彼らの完成作品はまだ多くはないが、ほとんどはコンペの勝利作品だ。
作品の特徴は、敷地のアーバン・スケープを十分読み込んでそれにインテグレートした作品を創出する。「シュチェチン」や「アグイラス・コングレス・センター」のように形態的な特徴に加えて、明るい色彩にまとめる作品というひとつのジャンルがある。また重量感がありマッシブで比較的暗いトーンの作品の2タイプがある。完成した「リベラ・デル・ドゥエロ本社」や、進行中の「グラウビュンデン美術館増築」や「ローザンヌ美術館」などがそれに当たる。その他「ブレッシャ図書館&学生センター」「チューリヒ・ダンス・スクール」などコンペ上位作品が控えている。

文:淵上 正幸(建築ジャーナリスト)

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1.シュチェチン新フィルハーモニック・ホール

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2.アグイラス・コングレス・センター

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3.リベラ・デル・ドゥエロ本社

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4.グランビュンデン美術館増築

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5.ローザンヌ美術館

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6.チューリヒ・ダンス・スクール

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7.ブレッシャ図書館&学生センター