エノタはスロヴェニアの首都リュブリャナを拠点に活躍する建築事務所。1998年にアルジョサ・デクレヴァ、ディーン・ラー、ミラン・トマックの3名によって設立された。2002年よりディーン・ラーとミラン・トマック2名のパートナー体制になった。彼らが目指すのは、オープン・タイプの現代的かつ批評的建築の創造で、都市的・建築的ソリューションを擁する開発への集合的なアプローチをベースにしている。
常に変化し新しく複雑な状況が生まれる世界が、われわれをして建築と都市組織の新しい手法へと誘う。そうした状況にチャレンジするには、われわれの文化的背景によって決められた従来の教育の垣根を超える必要がある。エノタはリサーチ主導型で環境創造にフォーカスしており、そこから現代的な社会組織の研究と新しいテクノロジーが織り込まれ、イノベイティブで効果的なソリューションへと繋がっている。エノタ流の問題解決メソッドは、自然から派生した社会的、組織的、デザイン的アルゴリズムのリサーチ・解釈・開発によるところが大きい。その結果、建築はそれを取り巻く環境と常に密接な状態にある。
エノタが手がける作品に、建築と外部環境が一体となったような作品が多いのはその証左である。例えば「ポドセトレテック・スポーツ・ホール」(1)は体育館のような作品だが、そのアプローチ通路は真紅に塗装され、黒い建物と見事なカラー・バランスを見せている。また「オルヒデリア」(2)という温泉リゾート建築も、中庭に露天風呂があるのは当然としても、そのアクセス通路の凝ったデザインは建築的精度を見せて、外部空間といえども建築本体に直結した一部と言えそうだ。
エノタのこの類いの作品として、「ソテリア」(3)などは自然が内部に侵入したかのような印象を受ける。「ヴェレンジェ・カー・パーク」(4)の外壁は、自然と建築が生み出す陰影を色濃く反映させて味わい深い。「プトゥジュ・パフォーミング・センター」(5)の改修では、外壁のような内壁ができており、視覚的な内外部の融合化が仕組まれている。
またランドスケープ・デザインにも達者な腕を見せるエノタは、噴水を兼ねた交通モニュメントである「ポドセトレテック・トラフィック・サークル」(6)や、河岸のアンフィシアターを兼ねた「プロムナーダ」(7)など、小品ながら研ぎ澄まされたような作品がある。決して仕事が沢山あるとは言えないリュブリャナで、若き建築集団エノタの洗練されたデザインは星のごとく輝いている。(その他の作品、「グルスコヴィエ」(8)「スタンボルジオスキ」(9)など。)
1.ポドセトレテック・スポーツ・ホール
2.オルヒデリア-1
2.オルヒデリア-2
3.ソテリア
4.ヴェレンジェ・カー・パーク
5.プトゥジュ・パフォーミング・センター
6.ポドセトレテック・トラフィック・サークル
7.プロムナーダ
8.グルスコヴィエ
9.スタンボルジオスキ