自然をクリエートする建築デザイン集団

世界の建築事務所vol.09

今年(2016年)7月、アンサンブル・スタジオの最新作「ティペット・アート・ライズ・センター」内の新作が完成し、そのニュースが世界の建築ジャーナリズム界を賑わした。「ティペット」はモンタナの広大な大草原に完成したランドスケープ・アーキテクチュア群だが、その表情は正に自然の巨岩のように見えるが、実は全て人工的にRC造などでできた建築・アート・ランドスケープ・デザインの融合作品なのだ。
アンサンブル・スタジオは2000年に、2人の建築家アントン・ガルシア・アブリルとデボラ・メサ(Anton Garcia-Abril & Debora Mesa)によってスペインに設立されたクロス・ファンクショナルな建築設計事務所。教育、リサーチ、実践のバランス取りながら、事務所は建築&都市スペースへのイノベイティブ・アプローチを探求し、その建設テクノロジーの開発にいそしんでいる。
「私たちは手と共に思考し、経験する」「私たちは結果より、そのプロセスをより正確にコントロールすることを心掛けている。というのは、開発段階でロジックを見出していくことは、ミスを軽減することにつながるからである」。これらをモットーにするアンサンブル・スタジオは設計・施工をする会社で、現在20数名のスタッフを抱えている。
彼らは作品構成の一部もしくは全体に、自然の素材を用いるのを身上としている。特に先述の「ティペット・ライズ・アート・センター」は、広大なモンタナの草原にワイドに展開するランドスケープ・アート・アーキテクチュア群(インバーティッド・ポータル(1)、ベアツース・ポータル(2)、ドウモ(3)、ミッドナイト・ロストラ(4)など)が素晴らしい迫力を見せている。その他にも「SGAE セントラル・オフィス」(5)は、巨石を荒々しく積み上げた石造壁面がど迫力だ!「ミュージカル・スタディ・センター」(6)は外壁と構造に重厚な石積みを使用。「ザ・トラッフル・ハウス」(7)は岩の中にできた穴倉週末住居で、大きなベッドサイド・ウィンドウから素晴らしい海景色を堪能できる。その他大都会メキシコ・シティの中心部にできた「テルセル・シアター」(8)は、地下という自然の中に劇場を埋め込んでいる。そのように常に自然との密接な連携が、アンサンブル・スタジオのデザイン・ベースになっている。

文:淵上 正幸(建築ジャーナリスト)

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1-1. インバーティッド・ポータル

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1-2. インバーティッド・ポータル

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2.ベアツース・ポータル

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3.ドウモ

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4.ミッドナイト・ロストラ(CG)

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5.SGAE セントラル・オフィス

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6.ミュージカル・スタディ・センター

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7.ザ・トラッフル・ハウス

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8.テルセル・シアター

Photos:1-1.~4. © Ensemble Studio / 5.~7. © Roland Halbe Fotografie / 8.© Synectics.