2棟が醸すV字形に傾斜した大胆な建築的造形美
フランス建築界の巨匠ジャン・ヌーヴェルと言えば、世界的な話題の建築家である。2002年東京に彼初の超高層「電通タワー」を完成させ、その後ニューヨークに超高層のハイグレードな「53West53」を、さらに中国に「深セン・オペラハウス」、「上海浦東美術館」と話題の作品を生み続けてきた。
2024年の夏季オリンピックのため、パリは高層ビル建設のラッシュが続いている。こうした状況の中、ジャン・ヌーヴェル設計の「トゥール・デュオ」は、パリ左岸の13区にあるブリュンゾー通り沿いに立ち上がった。
2棟からなる「トゥール・デュオ」は、延床面積140,000m2の巨体で、39階建て、高さ180mの「デュオ-1」と、29階建て、高さ125mの「デュオ-2」がある。建物は324mのエッフェル塔、210mのモンパルナス・タワーについで、パリで3番目に高いビルとなった。建物は2棟がV字形に対峙した感じで立ち上がっているが、手前に立っていて頭がある建物が「デュオ-1」で、奥側に傾いて見えるのが「デュオ-2」である。
パリ東部開発の起爆剤ともいえる「トゥール・デュオ」は、強烈なランドマークとして君臨し、このエリアを未来へと牽引するメルクマール的存在だ。「トゥール・デュオ」は夏季オリンピックの建設ラッシュの一翼を担う大プロジェクトとして期待が高まっている。
2024年7月
文:淵上 正幸(建築ジャーナリスト)
Tours Duos (Paris, France)
Design : Jean
Nouvel
Photos : Roland Halbe